『世界の適切な保存』永井玲衣


講談社(2024)

哲学者の永井玲衣さんの本は今回で二冊目になります。

最初に読んだ『水中の哲学者たち』では、

哲学とはこんなにも日常のなかにあるんだ、

自分も哲学という分野について考えていいんだと思えたことが新鮮でした。

それまでは「哲学」という言葉を聞くだけで、

どこか自分とは遠い存在に置いていたと思います。

そして今回の『世界の適切な保存』でも、

一貫して永井さんは世界を深くみつめ

他者から生まれた言葉をやさしく受け止め、

文学や詩の中にある思索も交えながら解説されています。

ちょっとおもしろかったのが、

天気予報にも哲学モメントを感じるという箇所です。

「天気」は人間の力で左右できない事象だからこそ、

「予報」するとはまるで預言者のようだ、と。

また、天気予報士のことばは、とても奇妙で詩のようだと。

変わりやすい空

夜のはじめごろ

荒れた天気

天気が下り坂

日常でのさまざまなことを拾い上げていて、はっとさせられます。

自分の中での「ひっかかり」が

永井さんのことばで溶かされていくような気がします。