『実は、内向的な人間です』ナム・インスク

創元社 (2020)

韓国で主流の性格診断テスト「MBTI」を受けてみたところ「内向型(I)」と出たので興味が湧いて手にしてみた。

本書では内向型と外向型の人間では、ドーパミンの受容体に差があるとのこと。

ドーパミンは幸福、快楽、興奮に関係した神経伝達物質で、新しい経験や刺激によって分泌されるようだが、外向型の人はそれを感じにくいらしい。だから、ドーパミンを分泌させる外部の刺激がストレスになりにくいとのこと。むしろ、刺激のない退屈な環境には耐えられないそうだ。

一方、内向型の人はリラックス状態で分泌されるアセチルコリンの働きにいっそうの幸福感を得るため、多くの内向型の人たちは、ひとりでいる時間のほうを好む傾向があると……。その例でおもしろかったのが「失恋した脇役はなぜ海外へいくのか」の章である。

失恋して飛行機に乗り込むシーンがドラマや映画によく出てくるが、内向型と診断された私にとっては「えっ…」という感覚である。新しい環境が過去の嫌な経験を忘れさせてくれると想像しがちだが、“安定”のなかにもっとも幸せを感じる内向型にとっては、失恋の痛手ですでに枯渇状態にいるなか、旅行という刺激がさらなる苦痛となることくらい想像できる。

逆に外向型の人は新しい刺激や冒険が過去の悲しみを打ち消すにはいくらか役立つと考える傾向があるらしい……。本当にそう思うのか外向型と言われる人に聞いてみたいものだ。

自分は「外交的」と思っていたけど、実は「内向的」かもと……と本書を読み進めると感じる人もいるかもしれない。自分の特性を知ることで安心できることも多く、また内向的という言葉を盾にするのではなく、外向性を求められるときは応じることーーそれは相手への礼儀と配慮だと説明している。押し付けがましいところは全くなく、背中をやさしく押してくれるようなエッセイである。