『人質の朗読会 』小川洋子

中央公論新社 (2014)

文庫の帯には「最初の7ページでもう名作だと分かります」。過大評価? と思いつつ、ページをめくる手が止められず、帯に偽りなしと感服した。

主人公は海外旅行ツアーに参加した7人と添乗員の8人。日本からみて、地球の裏側にある小さな村で、彼らの乗ったバスは反政府ゲリラの襲撃を受け、バスごと拉致されてしまう。

犯人の要求は逮捕されている仲間の解放と身代金だ。ゲリラと政府の交渉は水面下で行われたものの硬直状態は続き、事件発生から100日以上が過ぎた夜明け前、銃撃戦の末に人質全員の命は奪われてしまう。このシーンで私は「えーっ!」と声を挙げてしまった。物語はここから始まる。衝撃的な結末を迎えた2年後。人質たちが監禁されていた場所で録音テープに残された8つの物語が発見され、ラジオで放送されたのだ。

拉致されたひとりひとりが紡ぐ物語。生きてきた中で、胸にひっかかって忘れられない記憶を原稿化し、毎晩1話、朗読する。その物語はどれもリアルでささやかだ。

私は本作を一気に読み終えた後、自らも朗読会に参加しているかの如く、毎晩、ひとつの物語を再読した。味に濃淡はあるものの、どの物語も噛み応えがあった。

あなたはどの物語に心を揺さぶられましたか?

皆さんとそんな話がしたくなる一冊だ。

sachikoi