『犬がつたえたかったこと』三浦健太

サンクチュアリ出版(2017)

かわいい動物たちのTikTokを見始めると、気付いたら一時間…ってことがよくあります。特にワンコ。たった数秒のリールで飼い主との愛情の深さが伝わってくるのをみるとウルッとしてしまうほど。そんなこともあり、普段手にしない「犬の本」を読んでみました。

本書には犬と人の間に生まれる実話が20編収められています。それぞれのエピソードには解説もついており、それがまたいいのだ。たとえば、犬は老化を恐れないため(正確にいうと、犬はそんな先のことを考えようとはしない)、犬にとっての「今」は、私たち人間の感覚では想像できないほど大事だと。思わず犬になりたい…と思ってしまう。歳をとって一人で歩けなくなったらどうしようとか、考えても意味のないことをくよくよ考えている人間の内面を知ったら鼻で笑われる…。

また人間にとって「名前」は大切なものですが、犬にとっての「自分の名前」は少し違う意味を持つそうだ。犬は、「自分の名前を呼ぶ」声のなかに飼い主の愛情の度合いを感じ取っているらしい。なので人の声のごくわずかな“響き”の違いさえもわかると。人間にそんな能力が備わっていなくてよかったと思う。

犬の話なのに、なぜか自分自身と比較しながら読んでしまい、読了後は「最近、冷たくあたっている父にもう少しやさしくしよう」と思ってしまった。