『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー 

河出書房新社(2020)

本屋さんに纏わる話が好きで、今回読んだのはパリの名物書店「シェイクスピア&カンパニー書店」をめぐる物語。

この書店は、1919年に設立された英文書専門書店で、ヘミングウェイやF・スコット・フィッツジェラルド、ヘンリー・ミラーなども通った初代から始まり、現在の二代目が舞台です。文学への愛を受け継ぎ、作家同士の交流の場を提供しながら、貧しい作家が無料で泊まれるホテルも兼ねています。

著者自身も所持金が尽きた末、この書店に救われたひとりです。宿泊条件(執筆計画、1日1冊の読書、書店の手伝いなど)を守りながら、奇妙な共同生活を送ります。

特に印象的だったのは、店主の人間味あふれる魅力。また朗読会や作家たちの交流、ボヘミアン的な生活が描かれた本書は、ただのエッセイを超えて、文学愛と人のつながりの温かさを感じさせてくれます。

[著者あとがきより]

この店はノートルダムの別館だというジョージ(店主)の言葉を思い出し、まさにそのとおりだと思う。確かに有名な書店だし、文学的にも大きな価値をもつ店ではるが、何よりもシェイクスピア・アンド・カンパニーは、川の向こうの大聖堂のような一種の避難所なのだ。だれもが必要なものを取り、与えられるものを与えることのできる場所、店主がそれを許している場所なのである。

本屋さんをテーマにした本は、やっぱり好きです。心が清々しくなる一冊でした。