『女二人のニューギニア』有吉佐和子

河出書房新社(2023)


1960年代、女流作家として活躍していた30代の有吉佐和子さんが、旧友で文化人類学者の畑中幸子さんに誘われて、ニューギニア奥地のヨリアピ村へ――。それも、まるで「ちょっとお茶でも」というくらいの軽やかさ。けれど、そこは有吉さんが想像していた場所ではなかったのです。

畑中さんがフィールドワークを行っていたその地で、少数民族・シシミン族の調査に同行し、ひたすらジャングルを歩き続けます。なんと、足の爪が全部剥がれてしまうほどに(そのため、有吉さんの滞在は一ヶ月以上にも及びます)。さすが作家…有吉さんの筆致に引き込まれ、読んでいる側も気が遠くなりそうな過酷な道のりだから、思わず「え……」と、何度も声に出てしまう。

そして、パンツさえ履いていないシシミン族はジャングルの奥深くで移動生活する狩猟民族。彼らは他の部族との戦いともなれば平気で人も殺すという(その頃のはなしです)。そんな彼らに関西弁混じりで自然に話しかける畑中さんのたくましさに、ただただ圧倒される。

文化人類学という学問がどんなものかはわからないけれど、畑中さんのような底知れない好奇心がなければ務まらないのだろう、ということだけはよくわかりました。

また、有吉さんとの関西弁での掛け合いも最高でした。過酷な地で、涙が出るほど笑いあえるふたりの関係性――こんな大人に憧れます。とにかくおもしろい、最高のサバイバル旅行記