『手記・空色のアルバム』太田治子

小学館(2024)

太宰治と太田静子さんの間に生まれた太田治子さんの『手記――十七歳のノート』と『空色のアルバム』を読了。

瀬戸内晴美(寂聴)のすすめで高校時代に書きはじめ、「新潮」誌上で発表された回想記を含む青春作品集(1984年集英社刊、今回はP+D BOOKS版で)。

父・太宰治に会うことなく育った彼女が、ふと教科書で彼の作品に触れ、「この人の子どもでよかった」と思うに至るまでの揺れと確信が綴られています。

太宰治に関する番組制作をきっかけに訪れた津軽の旅 、母・静子さんとの暮らし――等身大の少女のまなざしで残されていました。

『空色のアルバム』では、大人になった治子さんが自らの人生を振り返りながら、凛として生きた母へのまなざしも深まっていきます。静かに立場をわきまえた母、書くことに軸を据えた娘。

そして『斜陽』をあらためて読み返すと、「これは太宰が私たちに遺した遺書」という静子さんの言葉が、今はすこしわかる気がします。

言葉にできないものを、文学がそっと残してくれる。
すべてが、小説のようでした。

『斜陽』太宰治:太田静子さんが書いた「斜陽日記」を元に書かれたもの