『読み終わらない本』若松英輔

KADOKAWA(2023)

『悲しみの秘義』が私にとってはじめての若松さんの一冊でした。この本は、悲しみや孤独、離別に焦点を当てたエッセイで、言葉の紡ぎ方にはただ者ではないと感じました。偶然にも日本に一時帰国していた友人に出会った日に読み終えたので、余韻を残しながら彼女にそのまま手渡しました。日本語に飢えていると話していたので、それならこの本は彼女に譲るべきだと。そして彼女は外国へ戻る飛行機のなかで一睡もせずに読みながら泣いてしまったと。

そんな若松さんの書評も読んでみたくなり、手にしたのが『読み終わらない本』です。若者に向けた語り口調ですが、40代の私でも十分に共感できます。名著からの言葉を掘り下げ、この文章を書いた人が本当は何を言いたかったのか…さらにいえば、あらすじの奥にあるものを自分で見つけ出さなければならないと。

《本に呼ばれるなんて、そんなことあるのか、と思うかもしれない。今はそう感じていても、君もきっと、いつかどこかで運命の一冊に出会うことになる。そうした運目の一冊を君はすぐに読むとは限らない。買って、手もとにあるのだけど、ずっと読み切ることができないかもしれない。でも、気になって、いつも手がすぐ届くようなところにおいてある、そんな一冊と君が出会うことができたら、君の読書の扉はもう、けっして閉じることがない》

本を読んでほしいけれど読んでくれないという子どもの悩みの解決策として、本書をそっとテーブルに置いておくのはどうかなぁと…。