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『グアテマラの弟』片桐はいり
初読みにして心を鷲掴みにされた片桐はいりさんの旅のエッセイーーグアテマラに移住した弟さんを訪ねる旅の話が綴られています。
まるで片桐さんと一緒に旅行しているような感覚に陥り、彼女が帰国されるときは私自身も寂しさでいっぱいになったほど。旅の本でこんな気持ちになったのは初めてかもしれません。
本書は、弟さん家族との交流やグアテマラでの生活、文化が片桐さんの目を通してユーモラスに語られています。
たとえば、今も民族衣装で生活をしている人たちを見て、世界で一番色数が多い民族衣装じゃないかと驚き、原色の色に殴られたような気分になったと語っていたり、富士山そっくりの山「ボルカン・デ・アグア」は、私も実際に見てみたいと思うほど片桐さんの描写に引き込まれました。他にもグアテマラ人が信仰するお酒とたばこが大好きな神様「サン・シモン(マシモン)」を訪問するところなどは、死ぬまでに一度は来たほうがいいよと呼ばれているような気がしたほどです。
グアテマラの様子だけでなく、片桐さんと弟さんのきょうだい関係も面白く読みました。
弟さんとは思春期頃からすれ違いで、お互いが何をしているのかも知らない時期があったようです。そんな二人が熱帯雨林地帯にあるマヤの遺跡「ティカル」へ向かう道中、「この世からほったらかされたような千年も前の遺跡の上で、わたしたちは雨が上がるのを待って、黙って何本もたばこに火をつけた」という場面があり、二人の縮まった距離感が感じられてジーンとしてしまったほど。
テレビで観る旅番組よりも、鮮やかに想像させる本のちからを改めて感じた一冊です。