『黒い絵』 原田マハ

講談社(2023)

「誰の作品なんだろう…なんだか宇宙人みたい」と、あまり深く考えずに手にした原田マハさんのこの本。調べてみたところ、カバーの装画は画家・彫刻家である加藤泉さんの作品でした。まるで自分の裏側をじっと見られているような気持ちになります。

6つの短編で構成された『黒い絵』は、人間の心の奥底に潜む暗い感情(嫉妬、妬み、憎悪など)がねっとりとアートに絡みつき、読者を深い沼へと誘います。特に「オフィーリア」を題材にした物語では、その深淵に引き込まれるような感覚を覚えました。

ミレーの『オフィーリア』は、なぜか「死」を美しいものと感じさせる作品であり(個人的な感想ですが)、本書を読んで、これまで上辺だけの美しさに囚われていたことに気づかされました。この物語では、画家がこれ以上ないほど美しい“溺死の瞬間”を切り取っていたのです。

原田マハさんのこれまでの作品とは異なる雰囲気を持つこの一冊は、賛否両論を呼ぶかもしれませんが、個人的には非常に心に残る作品のひとつとなりました。彼女の新たな一面を垣間見ることができる作品です。