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『月とコーヒー』吉田篤弘
24の短編集で収められている本書は、あとがきにも述べられているように、一日の終わりの寝しなに読むと、とてもいいのかもしれない。一つの話を読み終える頃には極上の優しさに包まれ「あぁ、今日も一日がおわった」と一息ついて眠りにつくことができる。
少し世間から外れてしまったような人たちの話にリアリティーはあるが、なぜか同じ世界で生きているようには思えない。平凡すぎる平凡のなかに何かを感じさせる空気感。私が特に好きだったのは「映写技師の夕食」と「青いインク」の三部作と「セーターの袖の小さな穴」。結論を求めすぎずに読むことで、自分の想像が話の続きになっていく――そんな一冊です。