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『本を読んだら散歩に行こう 』村井理子
集英社 (2022)
翻訳家にしてエッセイストの村上理子さんが50代のいまの生活の中で思うこと、気づいたことなどを綴りながら、その時々に読んだ本を紹介するエッセイ。
まずはタイトル、「本を読んだら散歩に行こう」が、とても素敵だ。本と散歩。どちらも豊かな人生には欠かせない。どちらにも気づきがあり、リフレッシュがあり、自分だけの自由な時間がある。だから、どちらも手離せない。何しろ50代は想像以上に忙しいのだ。
それぞれの環境にもよるが、村上さんを例に取れば、受験生の双子男子の子育てがあり、家事があり、自らの、そして夫の両親の介護があり、不意に訪れる家族との別れがあり、仕事がある。平等に与えられる時間は1日24時間なのに、これらすべてをこなしているとは、なんとも、言葉が出てこない。「すごいな」は陳腐だし、「大変」には距離感がある。
村上さんのみならず、多くの人々が、こんなふうにいくつもの顔を持って日々を過ごしているのだと思うと、だから、いつでも悪態をついていいのだ、とも思う。とはいえ、本書には罵詈雑言が並ぶわけではない。忙しい日々の中で、ふいに思考は過去に戻り、(過去が)話しかけてきたり、こんなところに気づきのかけらが、ということを真っすぐに綴ってくれている。ゆえに共感偏差値は高い。
村上さんの日常とともに紹介される本は40冊。エッセイあり、小説あり、コミックあり、写真集あり。そのつど、「読んでみたい!」「そばに置きたい!」と思った本をメモしたら、23冊になった。当たり前のことだけれど、毎日、読書をしても、世に出ている本すべてを読むことは出来ない。本の海は広く深いことを教えてくれる1冊でもある。
by sachikoi