『無人島のふたり』&『自転しながら公転する』山本文緒

左:新潮社(2022) 右:新潮社(2020)

『無人島のふたり』は、2021年10月に58歳で急逝した作家・山本文緒さんの遺書のような日記です。膵臓がんと診断され、余命宣告を受けてから思いのままに綴っておられます。

書き残したテーマにおいては、「もう書けないので誰かが書いてくれてOKです」とか「長年小説を書いてきてもういい加減「書かなくちゃ」という脅迫観念から解き放たれたいと感じるかと思ったら、やはり終わりを目の前にしても「書きたい」という気持ちが残っていて、それに助けられるとは思っていなかった」とか(ここでわたしは号泣)。

そして亡くなる数日前には、「人間同士の関係は男女だけでも、女同士だけでも男同士だけでもない。恋愛だけじゃないし、親友だけでもない。ただずっと離れずに自転公転をゆるーくゆるーく繰り返すことができるのが豊かなことかもしれない」と。なぜかこの「ことば」が心に残り、すぐに『自転しながら公転する』を読みました。登場人物が、ものすごく人間的だなと思うような一冊です。人間だからこんなにもややこしく考えてしまうし、人間だから人に期待したり絶望したりしてしまう。山本さんの作品を少しずつ読み返していきたい。