『苦海浄土 ―わが水俣病』石牟礼道子

講談社文庫(2004)

本書を手にするまでに、10年以上もかかってしまいました。

多くの作家が称賛し、読み終えた友人からも「絶対に読むべき」と勧められていたのに、なかなか手が伸びませんでした。きっとその背景には、「自分には少し重たいかもしれない」「途中で挫折してしまうかもしれない」という不安があったのだと思います。それなのに、いざ読み始めると一気に引き込まれ、最後の解説や資料までも読み込んでいました。

感想を言葉にするのは難しいのですが、本書は単なる「ルポ」ではないということ、「文学」として読まれるべき作品であること――。編集者・渡辺京二さんの解説を読んで、そのことを改めて実感しました。また、石牟礼道子さんの眼差しを通して人間の傲慢さに憤りを覚えながらも、詩的な言葉の力に圧倒され感動すらしてしまい、この何とも言えない気持ちをしばらく抱えていくことになりそうです…。