『ことばの食卓』武田百合子

筑摩書房 (1991)

食に関する記憶や思い出を綴ったエッセイ集。亡き夫の不在を「あの人の指と手も(自分が)食べてしまったのかな」と記す。いつのまにか、自らの中に取り込んでしまった夫の存在を表す生々しくも印象的な表現。何気ない日常、人の営為の底にあるものを炙り出す一書。愛おしさと艶めかしさが入り混じり、果実の持つ魅惑を思わず巡らせる「枇杷」などを収録。