『ウェルカム・ホーム!』丸山正樹

幻冬舎 (2022)

主人公の大森康介は新米介護士。特別養護老人ホーム「まほろば園」で働き始めるが、日々、便臭に悩まされ、認知症の人たちの不明瞭な言葉や行動に戸惑うことばかり。加えて重労働に低賃金ということもあって、介護の本音が漏れている。そんな中、康介は先輩介護士たちにもわからない、気付いていない入居者(利用者)たちの不安や謎めいた言動の意味がわかるようになる。それはなぜか――。本書のおもしろさは、ここに集約されている。

本書は、「障がい者や高齢者など自力で動けない者は、飛行機などの乗り物の座席は常に一番奥、降りる時は最後で“いざ”という時“邪魔者”とされるのではないか――」との著者の衝撃的な疑問から生まれた一冊である。著者には重度の障がいのある妻がおり、約30年寄り添った話『ワンダフル・ライフ』が多くの人の心を揺さぶった(「読書メーター OF THE YEAR 2021」総合第1位)。長年の介護経験を持つ著者による、介護する人、される人、それぞれの切なる想いに寄り添った、軽やかだけれども考えさせられる作品。