『ひとり暮らし』谷川俊太郎

 新潮社 (2010)

結婚式より葬式が好きだ。葬式には未来がなくて過去しかないから気楽である――多くの人は華やかな式に、幸せそうなカップルの姿をみて、結婚式はいいなぁと感じるのではないだろうか。私もその一人であるが、このエッセイを読むと「なるほど…」となる理由が述べられていておもしろい。また最近では葬式にまで未来を持ち込んでいると著者は言う。絶えず人間という矛盾に満ちた存在に目をこらし、詩人らしい感性と詩人らしい暮らし方が淡々と語られる文章がとても心地よい。