『小説家の一日』井上荒野

文藝春秋 (2022)

作家・井上光晴の長女である荒野さんのSNS、メモ、小説等「書くこと」をテーマとした十作の短編集。著者の作風を知っておられる方は、“THE 井上荒野”を強く感じられるのではないかと思います。

職場で不倫中の男性とのメールを書簡形式に。小説家の妻が(『あちらにいる鬼』がちらつく?)夫の不審で滑稽な行動を通して小説に。出版社の編集部に勤務する女性のままならぬ思いが裏目に出てSNSで炎上など、10人の女性たちの揺れ動く心情がストレートに伝わってきます。またどの作品も着地点が巧妙で、さすが「短篇の名手」と思わせる一冊。