『ハツカネズミと人間』ジョンスタインベック

新潮社; 改版 (1994)

ついつい後回しにしてしまっている「名作」の数々。いつでも読める――そんな気持ちがあるからでしょうか。そんな中、どなたかの素晴らしいレビューに「読んでみたい!」と心が大きく動いた作品は、ジョン・スタインベックの『ハツカネズミと人間』。内容は、世界大恐慌時のカリフォルニア州が舞台で、ふたりの出稼ぎ労働者ジョージとレニーの友情と哀歓、楽園への夢と挫折が描かれた物語です。

ジョージとレニーは体も知恵も対照的で、いつもともに行動している。しかし、頭の回転の悪い大男のレニーがいつも問題を起こしてしまうため、ひとつの場に居つくことができず、数々の農場を渡り歩くはめになる。そんな二人がたどり着いた新たな働き口で悲劇が訪れます。特に最後のシーンは情景と会話の描写があまりにもリアルで手に汗を握るほど。読み終えた後は一人その場に取り残されてしまったような気持ちになってしまいました。え、どうしたらいいのだろうと。

決して「あ〜、読んでよかった!」と清々しさを得られる作品ではありませんが、時にはこんな作品もいいなと。心に残る一冊となりました。