『花びらとその他の不穏な物語』グアダルーペ・ネッテル、 宇野和美訳

現代書館 (2022)

現代メキシコを代表する著者の邦訳短編集。生々しいフェチ感に溢れ、少し気持ち悪いが読みだしたら止まらない。

女性トイレに忍び込んでは残り香や残り尿を調べ、その主を探し出す男を描く「花びら」。髪を抜く癖に取り憑かれ、生活も精神も崩壊し療養中の女の手記「ベゾアール石」。まぶたの整形手術の術前・術後の写真撮影を仕事とする、まぶたに執着せずにいられない男「眼瞼下垂」など、人間の習慣や思い込み、奇妙な癖を描いています。どの作品も、じわじわと不穏な「なにか」が迫り、身体にまとわりつくような独特の雰囲気があり、好き・嫌いがはっきり分かれそうな一冊ですが、私はおもしろく拝読しました。