『世界で最後の花』ジェームズ・サーバー

ポプラ社(2023)

ジェームズ・サーバー(1894-1961)氏は、「ニューヨーカー」誌の編集者として勤務しているとき、偶然にも同僚がサーバー氏がそのへんの紙に描いた絵を拾い、あまりにもよかったので同誌専属の漫画として採用され、人気を博されました。

驚いたのは、サーバー氏は幼少時に負った目の傷の影響で、ほとんど全盲状態だったそうです。なので、自分が描いた絵もぼんやりとしか見えなかったと…

本書は第二次世界大戦開戦時に描かれたもので(1939年に刊行)、戦争の繰り返しに皮肉を込めつつ、また平和への深い願いを込めた「絵のついた寓話」です。そして今回、村上春樹氏による新訳で復刊され、シンプルな絵と言葉が戦争に対するメッセージを力強く伝えています。戦争を繰り返しすべてを喪失した人間は、再び愛を取り戻しても懲りずに戦争を引き起こす――。何度繰り返せば人は学ぶのだろう…戦争の愚かさを。強烈に感じ取ることができる一冊です。