『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』ルシア・ベルリン

講談社(2019)

著者の生涯が濃密すぎる。
幼い頃から住む場所を転々とし、祖父から性的虐待を受け、母も叔父もアルコール依存症。3度の離婚を経て、高校教師、掃除婦、ERの看護師などをしながらシングルマザーとして4人の息子を育て、自身もアルコール依存症に苦しむ…
そんな著者が描く小説は、ほぼすべてが彼女の実人生に材をとっているらしい。だからなのか時々小説を超えた生々しさがあり、リアル度が過ぎるところもある。ただ、スパッと切り落とす勢いに揺さぶられながら引き込まれる。一昔の物語とは言え、養護施設に住む患者たちを連れたピクニックの話が強烈だった。私がケアされるなら、あちらのほうがあっているような気がする。多少雑でも(たぶん、あちらの人はそうは思っていない)自由な心のままでいられそう。

翻訳:岸本 佐知子