『長い読書』 島田潤一郎

みすず書房(2024)

『長い読書』というタイトルを見て、これまで島田さんが手にされた本のことが知れるのかなぁと、とても楽しみにしていました。本書は、島田さんの読書体験や文学への情熱を描いた散文集で、彼がこれまでに読んだ本との出会いやそれによって得た知見や感動が綴られています。さらには、読書が彼の人生や思想にどのような影響を与えたかについても深く掘り下げており、島田さんの人柄が目に浮かぶようでした。

どうしても島田さん=夏葉社(ひとり出版社)のイメージが強く前面に出てきますが、当然、彼の24時間には仕事以外の時間もあります。本書には「本と家族」という章タイトルの中で子育てや介護のことも述べられていました。

子育てでは松田道雄の育児書に助けられたことや、介護で疲弊しそうなときには「読書」が支えになっていたことなどが描かれており、なぜだか涙が溢れてきたほど。島田さんの読書を通じて見えてくる文化や社会のあり方、そして文学に対する深い理解と愛情が感じられたことすべてが私に深く響いたのだと思います。