『月と散文』又吉直樹

KADOKAWA(2023)

『まさかジープで来るとは』――この本で又吉さんを知り、なんておもしろい感性を持ったナイーブな人なんだろうと。それからずっと又吉さんのファンで、彼のラジオ番組『あとは寝るだけ』も毎週欠かさず聴いています。ただ残念なことに、小説は自分にはまりませんでした(賞を受賞されたことは大変喜ばしい気持だった)。

『月と散文』はエッセイで、ラジオで聴く又吉さんのイメージがそのまま活字になっているような気がしました。誰にも気づかれないような小さなことを深く突き詰め、その思いや考えを言語化し、自己を流出して綴ることができる才能に驚かされます。また個人的な考えであっても、けして押し付けがましくない。

なにかに対して誰かが「これ好きなんです」と語っているのを見て、「そんなしょうもないもん好きなんてダサいな」って思うこともない。だけど、「これが好きな僕っていい感じでしょ」という姿勢を見て、とてもダサいなと笑うことがある。

尖らずして「それなっ!」ってところを突いてくる表現に思わず頷いてしまう。