『自分疲れ: ココロとカラダのあいだ』 頭木弘樹

創元社(2023)

タイトルが示す通り、自分自身でいることに疲れるという感覚を探求する内容で、著者の頭木さんが自身の難病経験を背景に心と体の関係性を多彩な作品を通して考察しています。私自身、文学が好きなので「すべてをひとつながりにする文学の力」に非常に共感しました。

著者は体に病気があるため体に意識が向かいやすく、それが非常につらいと感じることがあるそうです。そんな時は心に寄り添うために文学を読み、心と体のバランスを整えるのだとか。学問が細分化・専門化されていく中で、文学は異なる要素を一つにまとめる力があると述べておられます。そして曖昧なその世界は「あいだ」や「グラデーション」に満ちているとおっしゃっています。それを読んで、とてもわかる感覚だと思いました。

そして最後に「自分はこういう人間だ」と固定的に考えるよりも、「あいだ」の存在として考えるほうが「自分疲れ」も和らぐのではないかという著者のことばに、ものすごく救われました。