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『いつかたこぶねになる日』小津夜景
新潮社(2023)
2週間以上、バッグの中で揺られ続けていた小津夜景さんの『いつかたこぶねになる日』。次の本に手を伸ばせないまま読み進め、ついに読了。新しい本の扉が開いた確かな感覚はあるのに、それをどう表現したらいいのか言葉に詰まってしまう。
本書は、南仏・ニース在住の俳人である著者が、古今東西の漢詩を翻訳しつつ、自身の日常や思索を織り交ぜて綴ったエッセイのような一冊です。何度も小津さんによる翻訳を通して遥かな昔の時代へと時空を超え、想いを綴った人たちの「存在」を感じ、小津さんの世界に引き込まれました。
「小津さんは、どうして漢詩を読むようになったのだろう?」そんな問いを抱えながら読み進めていると、実はもともと関心があったわけではなく、子どもの頃、ガーデニングやインテリア雑誌を読みあさる中でたどり着いたとのこと。そして漢詩には「晴れの日は庭先で花を育て、雨の日は書斎で茶を飲む」というような作品が多く、その感覚が気持ちよくて翻訳を始めたのだそうです。何事も「気持ちいい」という感覚からすべてが始まるんだなぁと……
これからの旅には、必ずこの本をお供にしたい。