『ナチュラルボーンチキン』金原ひとみ

河出書房新社(2024)

『蛇にピアス』の衝撃、そして『パリの砂漠、東京の蜃気楼』のエッセイからも「自傷しながら進む」印象が強かった金原ひとみさん(勝手な想像です)。だけど、本書はまるで別のベクトルへ全力疾走するような読書体験でした。

ルーティンを愛する45歳の事務職女性・浜野が、ホスクラ通いの20代パリピ編集者・平木と出会い、自分の人生を取り戻していく物語。語彙力の高さ、文章のスピード感、そして希望に満ちた展開に惹き込まれ、まさに一気読み!

「私、昔から規格がでかくて、だから小さなところに入るのはやめたんです。兼松の社員とか日本人とか女とか地球人とかじゃなくて、もうなんか自分のことは一つの世界って感じで捉えようと思って」――パリピ編集者のこの言葉に「なるほどぉ」と思いつつも、どこか過剰すぎると抵抗を感じるルーティンに凝り固まった浜野。でも、そんな彼女の思考も実はかなりぶっ飛んでいたりする。

きっかけさえあれば、人はいくつになっても変わっていける――そんなポジティブなエネルギーが詰まった、愛すべき一冊。